Issue 1 – Writings
Tsuyoshi Katoyama
だいたいわかるようになってきた。風邪を引く兆候が出るのは1日前。汚い電子音のアラームで起きると喉は不機嫌で、唾を飲み込むと染みるように痛い。洗面台の鏡の前で携帯のライトをつけ、喉の奥の行き止まりを照らす。ヒトの内側の赤色がマグマのように濃い。喉はいがいがと反抗的なのに、あたまのなかにただよう雲は分厚くソフトフォーカスで曖昧模糊。引き出し奥のオムロンの体温計を脇に挿すと、先っぽの金属がひやっとするのは一瞬で、ピピッと鳴って数字を見て直ちに理解する。微熱だ...
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Issue 1 – Writings
Sogo Hiraiwa
ひとりが好きだ。大勢も嫌いではないけど、ご飯を食べるのも、映画を観るのも旅行をするのも、ひとりのほうが気楽で落ち着く。だから、ソーシャルメディアとかはけっこうだるい。とはいえ、まったくやらないわけでもない。仕事と社交のために、それなりの頻度でやっている。この「ソーシャル」というのがクセ者だ。そもそもホモ・サピエンスが言語というメディアを発明したのは、社会的なつながりをつくるためだったと言われている。ネアンデルタール人も言語を使えたようだけど、ホモ・サピエンスの共同体のほうがネアンデルタール人の共同体よりも規模が大きく
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Issue 1 – Writings
Umi Ishihara
もしかしたらここから遠い世界に住む、会ったことのない誰かの悲しみが自分の身体に乗り移っているのかもしれない。暗くて長すぎる真夜中、ぼんやりと汚れた顔でガラガラのバスに座って、誰も自分のことを待っていない、遠い南にある家に向かう。ほとんど死人のような自分の顔の反射をガラス越しに見てぎょっとする。こんな顔をしていたんだっけ。音楽でも聴けば少しはマシな気持ちになるのを知っているのに、イヤフォンを鞄から探す気力もない。さっきまで楽しく友人たちと酒を飲んでおおはしゃぎして笑っていたのに...
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